2009/9/25 手術室内での移動が多かった金曜日 [平日]

6:00 今日は少し早起きしてみた。朝に少し作業をしてみようと思い立ったのだ。朝食はヨーグルトメインのあっさりしたもののみ。
7:20 病院に向かう。Rahmanianの部屋に立ち寄る。昨日flapの本を(自由に使わせてくれている)借りていたので返しに寄った。
7:30 朝のカンファ開始。今日はDoldller医師(見た目は40半ばだがassistant Arzt)が自宅からチーズケーキやクッキーを持参して来て皆に振る舞っている。普段あまり手術にも入ってないし、比較的影が薄い存在だっただけにちょっと意外である。人は良さそうなのだ。しっとりとした結構上品な味のチーズケーキとコーヒーを頂いた。カンファの方は特記事項はなかった。
8:00 今日は手術前に回診について行こうと思い、病棟に向かう。今日はWelling医師(下っ端の病棟係のよう)が看護師やPTなんかと回り始めていた。少しじっくり見学させてもらったので、何人か目についた患者さんを紹介してみる。
・80代のおばあちゃん:顔はしわくちゃで可愛らしいのだが、可哀想なことに夜中に全身を犬に咬まれてしまった。顔から両腕・両足まで・・・。何でこんな姿に。。相当凶暴化してしまったのか?夜中にNusche先生が呼ばれて駆け付けたという症例だ。創を洗浄し縫合しているが、各創の間より細い鋼線に取り付けられた小さなセメントビーズのような物が留置されている。抗生剤が含浸されているということだ。汚染創にはドレーンの代わりに使用しているとのこと。
・20代前半の青年:自分がこのBGで初めて手術に参加させてもらった症例なので妙に愛着がある。下腿遠位の開放粉砕骨折後の軟部組織欠損に対する広背筋遊離皮弁術後だ。現在は内反変形が目立ってきている。自分としては、術中から気にしていたことなのだが。Plastic surgeonは皮弁の生着などに関しては良く診察するが、機能的なことに関してはやはり苦手である。実際、手術でも外側側副靭帯が全くないのにお構いなしなのだから。一貫して皮弁まで扱える整形外科医が治療していく重要性を改めて痛感する次第である。
・40半ばのおじさん:急患で片側の伸筋腱縫合をさせてもらった症例だ。ほぼfull extension可能で現在装具装着+リハビリ中だ。Sehr gut!(とても良い)そうだ。安心した。
・40後半のおばさん:不運にも両手の母指をMPレベルで電動工具により切断してしまった方だ。まだここに自分が到着する前の症例で、もう1ヵ月半以上入院しているがあまりお目にかかったことはなかった。右側は再接着したようだが、左はMPレベルから先がない。どういう経緯でそうなのかはまだ不明のままだ。今度Rahmanianに聞いておこう。
・70代のおじいさん:急患で母指PIPレベル以遠を切断したけど挫滅が強く再接着しなかった症例だ。この症例も手術に参加させてもらっている。示指背側からKite flapのように島状にflapを移動させ、母指先端軟部組織欠損部をカバーした。リハビリ中で頑張っている。ちょっととぼけたreactionが面白い人だ。示指背側の全層植皮部分が陥凹しているのと、まだ示指PIP関節が硬いようだ。こう言う良い症例をみると旧態依然としたアルミホイル法で粘るのも時間的に大変だしどうなのかなという気になる。大事なことは、皮弁というoptionも持っていた上で総合的に判断することなのであろう。
・50くらいのチョイ悪親父(陽気なイタリア人ジェローラモみたいな感じ):前腕をプレス機で数時間ほど挟まれたまま抜けずに前腕の筋群が壊死、皮膚がデグロービングされた症例。先日Phau医師がALT free flapをした。術後経過良好。このような広範囲軟部組織欠損でもrecoverできるflap技術は、最近もう特殊な技術ではないんだなと思ってしまう。
・40半ばのおばさん:昨日の美容外科手術(下腿の脂肪除去)の症例である。術前より細くなった自分の脚を見て喜んでいる。あれくらいでも嬉しいんだなと妙に感動した。
・30代後半の男性:下腿開放骨折後の軟部組織欠損にSural flapを施行したが生着せず、先日ALT free flapを再手術した症例。先ほどのおばちゃんと違い、妙に顔が暗い。回診医師の質問にも非協力的姿勢だ。。。やはり手術が上手くいかなかったこともあり、医療者側に不信感があるのだろうか?こういう方を見ると、手術は常に成功させ続けなければならないと気が引き締まる。手術にホームランはいらないかも知れないけど、常にヒットを打ち続けなければならないのだから。
9:20 回診後に部屋で少しのんびりしてから、手術室に向かうとNusche先生が手を下して上がってきていた。もう1例目(手術が繰り上がっていた!)が終わってしまったのだそうだ。母指MP関節尺側側副靭帯損傷(陳旧性)に対して、長掌筋腱を用いて再建を行った。見学しておきたかったのだが。。。残念。。
9:30 Op室内をうろつくが、ちょうど入れ替えの時間と重なって、どの手術もタイミングが悪かった。もうこの時点で10例ほどの手術が終了し、次が始まろうとしている。仕方なく休憩室で軽食を摂ることにする。ちょっと遠くにあったミルクを取ろうとしていると、髭面が印象的なおじいさん先生(trauma team)が話しかけてくれる。この人は時々手術室で見かけるが、マスクを外すと長いヒゲがくるんと丸く上がっているので面白い。きっとお気に入りの髭なのに違いない。日本は綺麗なんだろう?って聞くので京都やら阿蘇やら外人に人気のある観光地のことなのかな?と思い、確かにいろいろ見どころはありますけど、ドイツに比べればゴミゴミしています。人口密度が高いので。日本に行きたいと言う方は良くいるが、実際に行ったことがある人は意外に殆どいないのである。皆一様に行きたいけど高いから。と言っている。
10:30 すでに2例目の母指CM関節OAに対する関節形成術が始まっていた。執刀は今朝チーズケーキを持ってきてくれたDoldller医師だ。まだそれ程経験がある訳ではないようで少し苦労されていた。キリの良いところで場所を移動させてもらう。
11:00 他では肩鎖関節脱臼に対して、シンセスのフックプレート(ハーケンプレートと呼んでいた)を用いて固定している。これで終わりなのかと思いきや、Tensor fascia lataを用いて制動を追加するらしい。興味深かったのだが、残念ながら外回りも忙しそうだしスペースもなかったので追い出されるように移動することになる。
11:20 隣の部屋では、C6-Th1の固定術をしているよう。先日、Schaller教授との一コマをデジカメで収めてくれたtrauma teamの長身の先生が参加している。Trauma teamでも脊椎手術に関わっているようだ。
11:30 着替えして別区画のseptic areaの手術見学に移動する。Lotter医師が学生と前腕の植皮と母指の挫滅創後の処置をしていた。母指の治療方針について悩んでいるよう。途中でNusche先生に方針を訊ね、結局はamputationすることになった。術前の患者説明では何て言っていたのだろうか?術中判断で・・・という常套文句を使っていたのかも知れない。
11:50 昼食に向かう。今日は珍しくライスがメニューに上がっている。しかし日本で食べるお米ではなく、細長くパサパサのやつだ。これだけでは食べられないので、ピラフにしたりソースをかけたりする。久し振りにフィッシュ(サーモンの焼いたもの)を食べた。
サーモンにパサパサライス.jpg
12:30 いきなりPHSが鳴った(トイレ中だったのに・・)。Saal 9の看護師です。次の手術が準備されているんだけど、ドクターが誰も来ないので手伝いに来てもらえるか?とのこと。何で自分の番号を知っているのか不明であったが。とにかく用を足してから急いで駆け付ける。
12:45 上半身・体幹の火傷の女性の手術で包帯を外したり準備が大変なのだ。ベテラン看護師のクリスティアーノ(ドクター達に名前で呼ばれている看護師は自然に覚える)が暇そうな僕を呼びつけたのだ。何度か一緒に手術に入っていたので少しは知っていてくれたんだろう。準備を始めていると遅れて学生のGonser君やLotter医師がやってくる。最後にRahmanianも現れ、もう一人の学生のクリストフもやって来たので人数は十分となる。準備完了しそこは後にする(正直言うと火傷の手術はあまり興味が沸かないのだ)。
13:30 またaseptic areaに戻り、着替えて手術見学にうろつく。今日はなんだかウロウロしていることが多いな。あまり目障りにならないようにだけ注意しよう。鼡径部のリンパ節摘出や下腿のPilon骨折(先日の上腕骨近位端を素早く終了させ颯爽と去って行った長身のtrauma surgeonが執刀)などを遠目に見学。まだtrauma teamに完全に見学に行くという感じにはなっていないので遠慮がちに見学する。
15:00なかなか手術が終わらないので、いったん外に出て病棟に行ったりする。リハ病棟のPCを見ていると、すれ違うと良く挨拶してくれる若手の背の低い医師(trauma teamだそうだ)が話しかけてきた。日本の秋葉原に行きたいとか、NINTENDOのWiiは面白いとか言っていた。何か困ったことがあれば声をかけてくれよと優しいのであった。
16:00 前の手術が押してしまったので、今日Rahmanianの手術に助手で入る予定だったのがようやく搬入になった。準備を済ませて彼の登場を待つのみにしておく。もうこの辺りの準備(こちらのやり方も)は慣れてきた。
16:30中指の中節レベルでの軟部組織欠損である。挫滅創が壊死したようである。
中指軟部組織壊死.jpg中指軟部組織壊死2.jpg
比較的欠損領域も広いし中節骨にも及んでいる。これに対して手背からの逆行性島状皮弁(intermetacarpal flap)でカバーしようと言うものだ。ディスカッションでamputationの話もでていたようであるが、若いし一度は試みるべきだと主張して彼が行うことになった。手技自体は皮弁内の血流を保持させるべく慎重に展開していかねばならないが実に興味深い。彼の手術は組織に対しtraumaticな点も多く、雑であるが早いし手慣れている。反面教師的な側面もあるしテクニックでも見習う所もあり勉強になった。
皮弁挙上後.jpgintermetacarpal flap術後.jpgintermetacarpal flap術後2.jpg
18:30 手術が遅く始まったのでこんな時間になってしまった。こちらでは完全に時間外だ。手術室も一部を残して殆どが終了している。
19:00 彼の部屋でPCに向かっていると、もう帰ったかと思っていたRahmanianが戻ってきた。疲れ顔だ。一度帰ろうとしたが何やら自宅との折り合いが合わずに(夫婦喧嘩か?)、暫く部屋で手術記録の録音をしている。
手術記録を録音するRahmanian.jpg
20:20 ようやく彼は帰っていった。こんな時間までいるのは珍しい。
21:00 何だかんだで自分も遅くなってしまった。帰宅する。今日も買い物に行くことができなかった。しかし、今日は来週ミュンヘンで行われる、バイエルンミュンヘンvs ユベントスのチケットが送られてきたから。ちょっと嬉しいのだ。
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