2009/10/6 AO fellowshipドクターのインド人登場 [平日]

6:30 起床。天候は曇りだ。最近は起きてすぐだと外がまだ暗い感じ。徐々に日が短くなってきているのを感じる。
7:30 朝のカンファレンス開始。昨日から来ている学生に加えてもう一人新参の学生(大柄な金髪女性)も加わっている。学生によって研修の期間が異なるので(短い学生は2日間とかもある)、彼女達がどの位いるのかはまだ不明だが、人数的には増えてくれたので少し安心する。今日は奥さんが出産したばかりのApel医師が担当で症例呈示している。またネコ咬傷の患者が来ていたようだ。この地域はイヌ咬傷は少ないけど、何故かネコは多い印象あり。
8:00 今日は滞っていたAOからの支給金がようやく手に入ることになっていたので、秘書のTumaさんに付いて教授秘書のもとを訪れた(病院の口座番号記載ミスで暫く振り込まれて来なかったのだ)。住居費・食費などが引かれたが、生活費は残ったので有難かった。
8:30 まだ早いのは分かっていたが、手術室に向かった。今日の手術は、多発外傷症例(骨盤骨折、右大腿骨転子下骨折、右前腕両骨開放骨折)の術後で、右手背部の軟部組織欠損に対するflap手術の予定であった。麻酔科の先生方が準備中であったので何気なく見学していた。準備の際には多い時で3人の麻酔科医が協力している。今日のmainの麻酔科医は何となく酔っ払った雰囲気の喋りをするちょっと面白い医師だった。挨拶すると妙に話かけてくれる。麻酔の見学をする積りはなかったのだが、流れで何かと手伝わされたり、外頚静脈からのカテーテル手技(患者は体重140Kgの巨漢女性で血管同定が難しかったのだが、いとも簡単に入れてしまう!)を細かく説明してくれたりした。また、時には気管チューブを人工呼吸器から外して、自分の手でバックを押して呼吸を感じていたりする。風貌は頼りないが麻酔職人のような人だった。分野は異なるがその道の達人みたいな人を見るのは新鮮である。
9:00 今日のflapは前鋸筋の筋膜のみ血管茎ごと遊離で採取し、尺骨動静脈に吻合する予定。広背筋皮弁で、肩甲下動静脈系の解剖は何度か見たので、だいたいポイントは頭に入った。胸背動静脈からの前鋸筋への分枝が重要となる。アプローチは広背筋皮弁の際とほぼ一緒だが展開は少なくて済む(筋膜弁のため皮膚は採取しない)。長期休暇明けのZwick医師とJaminetが採取側、前腕の血管同定側は、Lotter医師と学生のPhilipとなる。自分は今日他の手術見学もしたかったので外からの見学とした。
手背部軟部組織欠損.jpg
10:00 両方の進行具合を高みから見学させてもらう。尺骨動静脈の同定はそれ程困難な手技ではないが、思いのほか血管系が細くてショックを受けていた。
11:00 比較的薄い筋膜弁が採取出来そうである。広背筋の前縁から前鋸筋を露出し、前鋸筋への分枝をdopplarで確認後、血管を含む筋膜弁をデザインして採取していく。muscleと一塊となっている箇所もあり、剥離が難しそうなポイントもある。分枝を血管茎とするので、それ程長い血管茎は採取できないのが欠点かも知れない。側頭筋膜弁でも再建可能であるが、こちらも悪くない手術のように感じた(素人目には・・・)。
前鋸筋筋膜弁挙上中.jpg採取した前鋸筋筋膜弁.jpg
11:20 休憩しながら、隣で行われる骨盤骨折の手術の準備具合をcheckする。休憩室でオマーンから来たというインド人のAO fellowshipドクターに遭遇した。今日でまだ2日目だということ。1ヶ月間trauma teamで研修するそう。部屋は自分の斜め前を借りているということで話が弾んだ。機会があれば食事に行きましょうと言って別れる。
11:20 trauma手術を見にいく。骨折は左の仙骨に縦に入って殆ど転位はないが、恥骨結合の離解が若干みられる。あの長身のOpの上手なStuby医師が執刀なので見学させてもらった。Imageをしっかり確認しながら、小切開で仙腸関節を固定するscrewを2本(ワッシャー付き)刺入していた。
仙腸関節screw刺入中のStuby医師.jpg
ものの10分くらい。おそらく骨盤の立体的な解剖が頭に入っているので恐れずに固定できるのだろう。その後、下前腸骨棘に創外固定pinを刺入し固定完了となる。片側を助手の先生にやらせていて手間取ってしまったが、それでも素早く終了。閉創は任せてまた颯爽と部屋を後にしていった。
12:00 昼食を急いで取りにいく。次のtraumaの手術も興味深い症例だったからだ。上腕骨遠位の関節内骨折に対するORIFだ。執刀は引き続きStuby医師。Settingから見たかったがちょっと間に合いそうもない。今日もマカロニメインの料理であった。ちょうど昼時だったので、たまたまStahl医師やBratani医師などと一緒になった。Wie sagt man das auf Deutch?(これはドイツ語で何と言うの?)Wie bitte jetzt?(今、何と言いました?)が最近のマイブームセンテンス。
12:30 traumaの手術室に戻ると、もう既に肘頭をV字に骨切りして関節内を展開していた。体位は腹臥位で、肘屈曲90°位で遠位はfreeだ。Imageが容易に入るようsettingされている。この手術は側面が重要なので、ポイントではimageが側面で見られるような位置で固定してある。手術は実にsmoothな流れで進んでいる。関節内の遊離骨片は手術台上でパズルの如く組み合わせてK-wire(適度な長さの各種径の揃ったK-wire setなるものが常備されている)で仮固定。そのK-wireを用いて上腕骨側に固定していく。骨欠損も生じていたが気にしていなかった。関節面の整復に特に力を注いでおり、細かく仮固定しネジ切りの吸収ピン4本くらい使用していた。骨折は滑車部より外側部のみであったので、シンセスのDHP外側用5穴(つば付き)を使用(このDHPもplateむき出しで各種取り揃えてセットとして常備されている、日本ではいちいち滅菌されたパックから取り出さなければならないことを考えると楽チン)。
シンセスDHPセット.jpg
スクリュー長の計測も手慣れたものだ。やはり熟練の技・センスを感じたのは、関節内骨折固定終了後、肘頭の骨切り部の固定(tension band wiring)の際だ。Imageに頼らずにK-wireを見事にパラレルに良い位置に簡単に入れている。こういう手術が見たかったのだ。自分はどうもimageに頼る傾向があるので、もっと感覚を大事にしていかなければならないなと改めて思うのであった。
上腕骨遠位関節内骨折.jpg上腕骨遠位関節内骨折術後.jpg
14:00 固定性は良かったが、外側側副靭帯がなく不安定性があるということで、術後は2週間ギプス固定(石膏で巻き込んでいた)をするそうだ。腹臥位の際に手術台に設置する肘関節固定のホルダーはradiolucentであるし使い勝手が良さそうであった。
14:30 flapのマイクロ吻合は見学しなかったが、いったん吻合完了し休憩に入っていた。これから最後の仕上げに入る段階であった。今日は来週からのtrauma team研修の話をしに、Prof Weise(この病院の最高責任者でもある)のもとを訪れるため、手術室を出なければならなかったのだ。
15:00 教授秘書さんのもとを訪れ、HPRVのSchaller教授には承諾を頂いて来週から1週間の研修をお願いしたいと思っておりますと告げる。すると、教授は今不在なので、また16:30に来て下さいということになった。仕方なくRahmanian部屋に戻る。
15:30 夕方のカンファレンス開始。Schaller教授は不在だ。手術予定表を見ると、明日は小手術だけが結構たくさん並んでいる。また、明日は学会前のプレコングレス的なcadeverを用いたflap courseが隣の大学構内の解剖棟で行われることになっている。Rahmanianはその責任者のため準備で忙しい。私も明日参加させてもらえるのだが、その準備手伝いもさせられることになった。
16:30 無事Weise教授の承諾も頂き、来週月曜から1週間のみtrauma teamと行動をともにさせてもらえることになった。用事が済むや否やRahmanianから連絡が入り、カンファ室で明日の打ち合わせをしているから来てくれないか?と呼び出された。
17:00 UKTの学生達を集めて(ボランティアのよう)、手配やら必要物品などを指示している。同じ年齢ながら大したオーガナイズぶりだと思った。これから大学の解剖棟に行って準備するから一緒に行こうと付き合わされる。
17:30 解剖ご遺体が6-7体あり、スタッフが準備している。血管から塗料のようなものを注入してflapで挙上すべき血管を染める処置をしている担当者もいた。なかなか労力のいるコースだなと感じる。物品手配は学生がしている。学生達はそれぞれしっかりしている(始めはスタッフなのかと思っていたほど)。
18:00 明日、朝7:30にここの解剖棟に集合ということで別れた。
18:15 部屋に戻るとちょうどインドのfellowship医師(Sunder)がいた。今お帰りですか?遅いんですね?traumaは特に何もなければ16時には帰れるみたいです(年上だが何となく丁寧な感じで話す。しかし酷い訛りなので聞き取りにくい)と言っていた。街にでも行ってみますか?ということに急遽なったので急いで準備して出かけた。
18:30 街の中心に一番近いバス停で降り、ぶらぶら歩いて座る場所を探す。何と彼は食事に誘っておきながら、ついさっき食べたばかりでお腹はいっぱいなのだとのこと。。。お酒も今日は止めておくと。。。え~?と思ったのだが、雰囲気の良いオープンカフェのテーブル席に座り、私はビールとチーズ風味のほうれん草パイ、彼は何と水だけ頼んだ(何しに来たのかと思ったが、多分研修に来てすぐだから仲間が欲しかったのかも知れない)。年齢は40で、13の娘と10の息子がオマーンのマスカットにいるらしい。そこの病院は病床数30床の個人病院でそれ程忙しくないとのこと。面白いのは、朝9時~昼13時まで仕事して、夕方17時~夜の21までまた働くのだとのこと。昼間は暑いので休むのだそうだ。しかし、終わる時間が遅いので大変でしょう?(日本も変わらないけど・・)と聞くと、そうでもないそうだ。公的な施設は16時なると閉まってしまうらしい。彼も週末はfreeなので色々と観光してみたいと言っていたから、今まで行った場所を説明してあげた。先週言ったオクトーバーフェスト情報も教えてあげた。
インド人Sunder.jpg
20:00 バスに乗ってBG病院まで戻り帰宅する。同じ境遇の仲間が増えるということは何となく心強いものだ。

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